学長ブログ

11月の学長ブログ

 晴天に恵まれた11月9日、今年の11月開講コースの開講式が開かれました。松丸市長にもご臨席いただき、祝辞を頂戴しました。今期の総合コース、専門コースの合計入学者は55名、これ以外に2つのオープンコースが予定されていて、ここでは合計36名の申し込みがありました。

 先月、私は船橋市の船橋マスター学院に招かれ、「土と水の環境科学―船橋市―」と題する講演を行い、その後、この会を運営している方々と交流してきました。船橋市の人口は約63.5万人で、守谷市のちょうど10倍です。平成16年に開校した「ふなばし市民大学校」は、その規模も守谷市の10倍あります。そして、私を招いた船橋マスター学院というのは、もりや市民大学友の会のような組織でした。皆さん熱心に聞いて下さり、活発な質疑応答がありました。そのあとの交流会も楽しかったです。

 そういえば、数年前には、川崎市民アカデミー(市民大学です)に招かれて講演したこともあります。川崎市は人口152万人の大都市です。ここでは「現代の水利用と農業」と題して、いわゆる水問題、地下水の問題、地球規模で起きている土と水の危機、などについてお話してきました。ついでに、市民大学の運営についてお話を伺いましたが、川崎市の規模が大きいので市民アカデミーも巨大な組織になり、その運営は大変な作業だと思いました。

 翻って、我がもりや市民大学、こじんまりしていると思います。そのこじんまりさが、特徴を出しています。大規模な市民大学では、組織運営が大変です。プログラム作りも大変、広報活動も大変、会計処理も大変、学務管理も大変です。運営委員は入学者へのサービスにこれ努めます。一方、もりや市民大学では、運営委員自身が必要と考え、期待するようなコース設計を心掛け、かつ、自分でも受講生になることができる、珍しい形式を生み出しています。それゆえ、教室で受講生と運営委員の協働が生まれることもあります。まさに、協働のまちづくりが、もりや市民大学の教室内で実施されているとも言えます。小さな市だからこそできる市民大学運営と協働のまちづくり、今後も発展させたいと思います。

10月の学長ブログ

 大きな災害が発生しました。台風19号です。千曲川、那珂川、久慈川といった有名な大河川の堤防があちらこちらで決壊し、大量の水が氾濫しました。守谷市でも、10月12日から13日にかけて、スマホや携帯が何度も鳴り、緊急警報が発せられました。そして、一夜明けたところのニュースでは、次々に河川の氾濫、堤防の決壊、犠牲者の続出が伝えられました。今現在も新たな被災ニュースが加わっているといった状況です。自然災害の恐ろしさを再認識しているところです。

 もりや市民大学でも、台風19号の接近に伴い、12日に予定されていた総合コース最終日の講義と修了式を中止しました。講義を担当していたのは、私です。災害のお話をしようかと準備していたら、本物の災害が到来してしまいました。そして、私は、翌日の13日にTXに乗ったので、車窓から利根川の増水を見ました。恐ろしいほどに水位が上昇していました。私の事前調査では、守谷市内を流れる利根川の堤防高さ(標高)は約14mです。したがって、もし利根川の増水が続いて越流が起きたとすると、標高14m以下の土地では床下や床上の浸水が起きたはずです。仮にどこか近くで堤防が決壊したとすれば、標高14m以下の広い範囲で浸水が起きたことでしょう。危ないところだったと思います。

 しかし、ニュースでも標高のことはあまり報道されません。どちらかというと、浸水の深さが4mだとか4.3mだ、などと報道され、家屋の場合も1m浸水、2m浸水などの表現が使われています。これは、目の前の現実を伝えるには適した報道ですが、そもそも堤防が決壊したり水位上昇で堤防を越流したりした場合、我が家に水が来るのか否か、という事前判断には適しません。住んでいる土地の標高さえわかれば、大河川の近くで安全な場所がどこにあるか、予測できます。

 そんなことを、もりや市民大学の総合コース最終日にお話ししようと思っていたら、未曽有の大災害が起こってしまいました。今現在は、被災地の救済や復旧が第一に重要でしょう。鬼怒川、小貝川、利根川とともに生きていかねばならない守谷市の自然環境について、もりや市民大学の教室で、皆さんと議論したいと思っています。

9月の学長ブログ

 忙しいので、落ち着いてブログを書く余裕がありません。なぜそんなに忙しいのか?と聞かれると、とても困るのです。そして、よく聞いてみると、私のまわりにも、忙しくて時間に追われている中高年者はたくさんおられます。特に、定年後の高齢者が一段と忙しくなっているように見受けられます。その理由を考えてみると、
①    定年延長で、60歳を過ぎても働いている人が増えた。
②    手取りの年金額が少ないので、定年後再雇用、再就職の人が増えた。
③    定年後の社会活動、地域サークル、地域スポーツクラブ、などに所属してスケジュールが埋まっていく人が増えた。
④    若い共稼ぎ夫婦が増え、孫の世話に駆り出される高齢者が増えた。
⑤    その他(病院通い、現役時代の延長線上で頑張っている、など)
こういったことが、忙しい高齢者を増やしていると思います。

 私の場合も、この中のいくつかに該当し、予定表が早くから埋まっていきます。みんなが忙しい世の中、これは、どう考えればよいでしょうか?活気があり、希望に満ちた社会である、と見るのか、みんなが別の方向に向かってバタバタする落ち着きのない社会になっている、と見るのか。

 私は、何だか落ち着かなくていやだなー、と思っています。天気でいえば、9月も中旬だというのに、夏型の台風が来るし、残暑は気温35℃近くまで上がって蒸し暑く、秋の気配が来ていません。社会に目を向ければ、内閣は改造するし、アイフォンは新機種を発表するし、消費税増税は目の前です。日韓関係、日米関係、日中関係なども、落ち着きません。来年はオリンピック・パラリンピックの日本開催ということで、特にマスコミがソワソワしています。

 ここは、ひとつ気持ちを落ち着けて、何か良いことを始めてみませんか?たとえば、もりや市民大学に入ってみて、新たなヒントをつかむ、新しい仲間を見つける、といった展開です。個々人がバラバラで、かつそれぞれが忙しい、という社会は、あまり豊かとは思えません。共通点を見つけて共に歩むことを楽しむ、といったことができれば社会も健全な方向に向かえるような気がします。協働のまちづくり、という目標にも合致します。「落ち着かない」を逆手に取ったブログでした。

8月の学長ブログ

 今後の予定をブログに書きます。まだ、公表されていない情報をいち早くリークすることで、注目を集めようという魂胆です。この種の情報、つまり、みんなはまだ知らないのに自分だけは先に情報を入手するときの妙な優越感というか、不思議なお得感といったものが、確かに世の中には存在しています。「ここだけの話ですが」という前置きで話をするとき、誰もが聞き耳を立てるのです。

 8月31日(土)は公開講座「世界の山・日本の山」と題して、登山家の青木達哉さんが山の魅力を話してくれます。まだ受け付中です。ご期待ください。11月開講コースに向けても準備が進んでいます。たとえば、オープンコースで自動車運転シミュレーター体験という教室も予定しています。自動車運転時の危険予知能力の客観評価を受けることになります。希望者が多いと人数制限がかかるかもしれません。「助けて」と言えるまちづくりの専門コースも準備中です。周囲や地域に「助けて」と言えず、悲惨な事件にまで発展してしまったケースが報道されています。具体的で有効な助け合いとは何か、これからの時代に欠かせない生きた知識を準備しています。

 ここだけの話ですが、来年4月以降のもりや市民大学は、がらりと構成を変える可能性があります。今までの6月開講コース、11月開講コース、といった組み立てそのものを変えるかもしれません。おやっ?何か違うぞ、どうなったかな?と思わせるような変身を考案中です。お・た・の・し・み・に。

 「熱中症に気をつけましょう」が合言葉の今年の夏、皆様体調に気をつけて、元気に乗り越えましょう。孫の相手でお疲れでしょう。お盆休みの家族旅行サービスでお疲れでしょう。家族が集まった家での食事や洗濯、大変でしょう。でも、過ぎてしまえば良い思い出になります。と、自分に言い聞かせている今日この頃です。

7月の学長ブログ

 現在続行中の専門コース「100歳まで元気に過ごす秘訣―健康寿命が延びるまちづくりを学ぶー」は大好評で、受講者数も出席者数も抜群に多いです。そんな中、7月9日には、株式会社つくばウエルネスリサーチの鶴園卓也先生が、サルコペニア・フレイル予防のお話をしてくださいました。加齢に伴い、筋肉が減少して機能低下につながることをどうやって防ぐか、という有意義な内容でした。特に、ウォーキングだけでは筋肉の減少は防げません、筋肉トレーニングが必要です、というお話には説得力がありました。

 講師の鶴園先生の会社は柏市にあり、柏市内はもちろん、全国的な広がりの中で各地に赴いて講演活動などを続けておられます。豊富なご経験の中から、面白いご指摘をいただきました。それは、「全国各地、どこへ行っても、こういった教室の参加者は圧倒的に女性のほうが多い。6~7割が女性で、残りが男性ということが多い。柏市の場合、女性に引っ張り出された形で男性が参加していることも多いようだ」とのこと。そして、「守谷市では男性の受講生が圧倒的に多いというのは非常に驚いています」ということでした。

 なぜ、もりや市民大学では男性の受講生が圧倒的に多いのでしょう?なぜ、女性の受講者数が少ないのでしょう?ここには、いくつもの疑問が含まれています。コース設計が男性向きに偏っているのか、女性の受講生が再受講したくなる魅力度が欠けているのか、初めから男性が多いので女性が来づらくなっているのか。そういえば、現在の運営委員会も圧倒的に男性の数が上回っています。これは、もりや市民大学の特有な問題ではないか、と思い至った次第です。

 皆さん、ご意見やヒントをいただけませんか?「こうすれば女性受講者を増やすことできる」、「いやいや、そのような努力をする必要はない、自然の流れに任せておけばよい」など、アドバイスをいただければ幸いです。私の意見ですか?私の見たところ、もりや市民大学に集まる男性諸氏は、とてもエネルギッシュで粘り強く、しかも明るい方が多いのです。女性を排除するような気配は見当たりません。交流の機会を増やせば女性も安心して参加できるのではないか、と楽観しています。受講生の過半数が女性となるような魅力的なコース設計をやってみたい、という夢もあります。

6月の学長ブログ

  6月1日に、松丸守谷市長をお迎えして、もりや市民大学6月開講コースの開講式が挙行されました。この日、私が学長挨拶として述べたことを今回のブログとして掲載します。それは、かつて私の恩師から「物事の本質を知るためには4つの目を持ちなさい」と教えられた内容を、受講生の皆さんにお伝えする、という内容でした。

 1つ目は、詳細に見る目、細かいことも見逃さず注意深く見る目です。確かに、注意深く見ることで新たな事実に気づくことはいくらでもあります。不注意はいけません。特に運転中の不注意は絶対にダメです。近頃は「ボーっと生きてんじゃないよ」と怒ってくれるキャラクターもいるようです。

 2つ目は大きな目です。細かいことだけに囚われず、大きな視野で俯瞰的にものごとを見ること、これも大切です。自分の姿を上空の鳥の目から見るような感覚です。全体を見る目、と言ういい方もできます。これは、経験と心がけと知識が必要でしょう。市民大学の講座も大いに参考になります。 

 さて、3番目の目は、心の目です。何事も心で感じ取ること、勿論大切です。美しいと感じたり楽しいと感じたり、深く感動したりする心の動きは、心の目で見てこそ生まれるものです。感性を磨きなさい、と言われたようなものです。最近、良い話を聞いた、とか、良い映画を見た、とか、良い音楽を聴いた、なども心の目を養ってくれます。 

 最後の4番目の目は何でしょう?ちょっと考えてしまうかもしれません。4番目の目とは、時間軸で見る目、つまり過去、現在、未来という時間に沿って物を見る目です。歴史に学び、今を冷静に見極め、なおかつ未来を展望する。まさに目の働きの最高度の役割です。時間軸で物を見る目を養うのに、図書館は立派な助けになります。書を読むことの恩恵は計り知れません。今のスマホパソコンでのデジタル情報は、時間軸で言うと今現在が肥大化し、過去と未来にはそれほど多くのヒントを与えてくれません。私は、読書は時間軸の目を養うためにも大切だと考えています。

 以上、4つの目を持つことの勧めを述べて、学長あいさつに替えました。今期入学者の皆さんが、各コースにおいて大いに収穫を得て、無事に修了証を受け取っていただけることを願っています。

5月の学長ブログ

 「全体の中で部分を知る」という行為は、なかなか難しいと思います。たとえば、もりや市民大学で「守谷を知る」とはどういうことを意味するでしょう?守谷の地理、守谷の歴史、守谷の人などを幅広く知ることは、勿論大切です。しかし、その守谷が茨城県内でどんな特徴を持ち、また、関東全域あるいは日本全体から見てどんな地域なのか、さらに大きく、世界の中の守谷にまで視野を広げ、地元の特徴を知ることも、やはり「守谷を知る」ことになります。

 本学の総合コースでは、そうしたいろいろな観点から「守谷を知る」ことができるようなプログラムを組んでいます。今期6月開講コースでは、東京芸大の向井さんから「アート/日常風景から守谷らしさについて考える」のワークショップを計画して頂き、また、ハッフ・ルイーザさんからは「国際社会/ドイツから来た国際交流員が見た守谷」の講義があります。お陰様で、このコースは毎回好評であり、受講希望者は常に定員を上回っていますが、教室に収容できる限りは全ての希望者の入学を受け入れることにしています。全体を見ながら地域を知り、地域で何ができるかを考える、そのきっかけ作りがここにあります。

 そういえば、「地域」がキーワードになる議論も事欠きません。人間文化研究機構総合地球環境学研究所教授の佐藤哲氏は、その著書の中で、地域のリーダーに求められる資質は「地域の現状を冷静に分析し」「地域の宝を見つけ、それに光を当て磨きをかける」「住民の気持ちを粘り強くまとめる」力だ、と述べています。また、新潟大学教授の田中秀氏は、地域を支える人財を育てることは容易ではないが、「その人財は決して目立ちたがり屋のヒーローではない。むしろ、地味でどこにでもいるような普通の人たちだ。だが、地域を何とかしたいと思い、地域のために何をすればいいのか常に模索を続ける人たちだ。」と述べています。昨今の国立大学学部再編では、「文理融合」と「地域」がキーワードになり、宇都宮大学の「地域デザイン科学」、佐賀大学の「芸術地域デザイン」学部などが新設され、地域の人材育成を掲げています。

 日経BP社主催の「シティブランド・ランキング―住みよい街2017―」では、守谷市が全国1位(他2市と同位)になったり、東洋経済誌の「住みよさランキング2018」では、守谷市が全国4位(1位印西市、6位中央区、8位港区、など)になったりしているのは、守谷の地域力を示していると思われます。受講生の皆さんには、総合コース「守谷を知る」からさらに進んで専門コースへ進み、地域の人材、いや、人財としてご活躍頂くことを願っています。

4月の学長ブログ

 この3月23日、もりや市民大学の公開講座が開催され、東京大学名誉教授の阿部啓子先生をお迎えし、「健康寿命を伸ばす食生活の創出」と題する講演を頂きました。私たちの日常生活に直結する話題を科学技術の最先端から紹介いただき、大好評を得ました。講演後のアンケート調査自由記載欄は、とても良かった、聞いて良かった、と賞賛の嵐でした。

 私も講演を聞きながら、いろいろ考えさせられました。まず驚いたのは、それまで抱いていた「未病」の勘違いでした。良く、「自分は薬を飲んでいるので大丈夫」と言う方を見かけます。薬を飲んで平常値を維持していれば「未病」の状態かと思っていましたが、阿部先生の定義では、健康な人と半健康な人は「未病」であるが、治療薬を常用している状態はすでに「未病」から外れているとのこと。自分に甘かったかな、と反省しました。また、保健機能食品について、消費者庁から生活習慣病の一次予防に役立つと認められた「特定保健用食品(トクホ)」と、事業者が消費者庁に届出すれば良い「機能性表示食品」との見分け方を教えて頂きました。消費者庁許可マーク(あの万歳マークです)が入っているのが許可された食品だそうです。その他、日本固有の発酵食品が脳機能活性化に良いこと、咀嚼(噛むこと)が脳の血流を増やし、血圧低下作用もあること、など、たくさんの「目からうろこ」を教えて頂きました。

 最も記憶に残ったのは、健康寿命を伸ばすために3つの柱がある、という指摘でした。その3つとは、正しく栄養を取ること、運動を主とする身体運動を欠かさないこと、趣味やボランティアなど社会活動へ参加すること、です。さらに補足事項があります。食事は「孤食」を避け、できるだけ人と一緒に食事することが健康寿命につながるとのこと。もっと印象的だったのは、3つの柱の中で運動だけは続けているが社会活動には参加していない人と、ボランティア活動などの社会活動だけはやっているが運動はやっていない人との健康寿命を比較すると、明らかに後者の方が長い、という調査結果でした。運動さえやっていれば健康、と信じていた人にはショックだったと思います。

 そのほか、たくさんのヒントを頂きましたが、何よりも、この公開講座に参加してワイワイ議論することも健康寿命を伸ばす大事な生活スタイルであるとのお話に会場がワッと湧き上がったのが面白かったです。「孤食」を避ける意味で講座終了後に仲間同士で食事会をすることも大事だったでしょう。そういえば、この講座終了後に市民大学友の会の総会と懇親会がありましたが、講演の趣旨が良く生かされたと思います。友の会の皆さん、健康寿命が伸びましたよ。阿部先生、貴重なお話、誠にありがとうございました。

3月の学長ブログ

 この季節、花粉症対策が必須です。「今年は早めに薬を飲み始めたので大丈夫です」「毎年1回注射してもらい、これで症状は抑えられます」「何だかぐしょぐしょして、目もかゆいです」「昨夜は苦しくて眠れなかったので、すぐに医者に行きました」など、様々な体験談を耳にします。

 私もかなりの重傷患者でして、毎年ジルテックという薬を就寝前に飲んでいます。が、あまり効果が無く、毎晩鼻づまりで苦しんでいます。鼻の奥が塞がるだけでなく、喉の奥まで狭くなってしまい、呼吸困難を感じたことも何度もあります。副鼻腔炎の手術を受けたこともあります。医者から処方された目薬、鼻スプレーは、症状をやや緩和してくれますが、期待したほどの即効効果は得られません。

 最近は、物理的対処法を信頼しています。まず、家中に掃除機をかけます。机や棚などの埃を拭き取ります。寝室の枕回りや布団に埃取りのローラーをかけます。外から帰宅したときは上着の埃を振り払い、場合によっては自分の服や頭髪を濡れタオルで拭き取ったりします。各部屋に空気清浄器は欠かせません。トイレで目がチクチクするのは、恐らく換気装置の働きで室外から空気を吸い込み、トイレ室内で花粉が床や棚に舞い降りているのだと思います。これを拭い取ると効果を感じます。以上、要するに花粉を物理的に排除することが最も効果をあげると信じるようになりました。

 不思議なのは、外出して好きなこと(スポーツや散歩)をしているときにはあまり花粉症の症状に苦しまないのに、家に帰ってくつろぐと症状が強く出ることです。この点につき、妻は「好きなことをしている時は苦しまないの?」と言って、理解に苦しむと申しております。さて、花粉症は、心理的要因が働くのでしょうか?物理的処置が最も効果的なのでしょうか?薬に頼れば大丈夫なのでしょうか?注射がお勧めでしょうか?、食生活の改善が必要でしょうか?多分議論は尽きません。杉の平均寿命は約2000年とか、まだまだスギ花粉アレルギーの話題は続きます。あと2000年お待ち下さい。解決して見せます。

2月の学長ブログ

  植物の発芽や生育は、不思議です。土の中からいつの間にか小さな芽が出てきて、日に日に成長し、やがて枝や葉を伸ばしたうえ、花を咲かせたり実をつけたりして、たとえばスナップエンドウであれば、取っては食べ、取っては食べ、それでも次の日に行くと新しい実がなっています。

 あるいは、室内のゴムの木。大学の研究室で長年付き合ってくれたゴムの木を処分した際、葉っぱ数枚をつけた小枝を1本だけリュックサックに入れて持ち帰り、物置に転がっていた鉢に植えて土をかぶせ、水をやって放置しておきました。すると、どれだけの日数だったか忘れましたが、ある日、どう見ても「生きてるな」という感じの立ち姿に気づきました。それから注意してみると、にょきにょきと成長し、いつの間にか葉っぱが茂り、1m以上の高さに成長しました。これでは大きすぎる、ということで葉っぱを適宜処分し、てっぺんを切り取って背を低くしました。その後、再び枝や葉を伸ばし、今では立派なゴムの木として室内に鎮座しています。根もしっかり再生しました。

 徳富蘆花という作家、ご存じですか?「不如帰(ほととぎす)」を書いた明治の小説家です。この本を映画化したものは、18本を数えるほどに流行りました。徳富蘆花さんは、その後トルストイに会って感化され、「土と共に生きること」を学んだと伝えられています。その徳富蘆花さんが、「みみずのたはこと」というエッセイ集を書いています。岩波文庫でこれも108版を数えるほどのベストセラーでした。そのエッセイの中の1つに「農」が含まれています。そこに土のことが書いてありました。人は土の上に生まれ、土の生むものを食うて生き、而して死んで土になるから、人は「土の化物」に過ぎない、そして、「土の化物」に一番適当した仕事は、土に働くことであらねばならぬ、あらゆる生活の方法の中、尤もよきものを捉えらみ得た物(原文通り)は農である、と断じました。

 ああそうか、大事なのは植物の生命を支えている土なのだな、と理解する次第です。「土は大切だ」ということは、言葉では理解しますが実感を伴う理解はとても難しいものです。アメリカの有機栽培農家の男性が自分の畑の土を「I love it」と言い切ったのを見たことがあります。自分の作った土に惚れた、ということです。なかなかそこまでの実感を持つことはできませんが、土の中から生まれる生命を見ると、良いものだな、という実感はわきます。土の大切さ、土の良さを、どう表現し、どう伝えるか、実は、今でも私は模索しています。それを自分の言葉で表したいと思っています。