学長ブログ
5月の学長ブログ
今月は、土壌は女性の地位向上に貢献するか、という話題です。第68回国連総会(2013年)において、2015年を国際土壌年とすることが決議されました。その主文には「土壌は農業開発、生態系の基本的機能および食糧安全保障の基盤であることから、地球上の生命を維持する要です。さらに、土壌には、経済成長、生物多様性、持続可能な農業と食糧の安全保障、貧困撲滅、女性の地位向上、気候変動への対応、水利用の改善など、様々な問題を解決する可能性が秘められています。」(抜粋)と記載されています。
私は、土壌を大切にすることが持続可能な社会を作ることに欠かせないことを十分に理解していますが、土壌を大切にすることがなぜ女性の地位向上に貢献するのか、今一つ分かりませんでした。
実は、今年2月25日に守谷市で開催された「大好きいばらきネットワーカー」の県南ブロック大会で、「守谷の土」という模擬授業を行った際、180人余りの聴衆に向かって、この問題を宿題にして出しました。答えは、学長ブログ上で発表します、と高らかに宣言しました。
ところが、その後、いくら調べても土壌を大切にすることが女性の地位向上に貢献する理由が見つからないのです。そこで、自分で考えることにしました。私の考えはこうです。豊かな土壌が存在する国は、文明が発達します。エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、中国文明などは洪水によって運ばれ堆積した肥沃な土壌が支えたものであることは良く知られています。文明は、社会の知識レベルを向上させ、そのことが女性の地位向上において決定的に重要になります。つまり、土壌は文明を支えるから、結果として女性の地位向上につながる、というのが答えではないか、と考えます。ノーベル平和賞を受賞したマララさんが、女性の教育を受ける権利を主張しているのも、類似した考え方です。
しかし、これだけでは漠然としていますね。もう少し具体的に、今日的な意味で土壌と女性の地位向上との関連を、今後も追究してみたいと思います。分かっているようで、よく分からない設問は、長く頭にとどめ、折に触れて考える、ということを繰り返すと良いのではないか、と気長に考えています。
4月の学長ブログ
新年度のスタートです。新学期、新入社員、人事異動、転勤、転居、そして新緑、全てが新しくスタートします。もりや市民大学も新学期のスタート、まずは、4月10日に募集を開始した6月開講コースの募集からです。
「守谷を知る」をテーマとする総合コースは、地域づくりや地域福祉、子育てや守谷の自然環境などを学びます。例年のように、双方向授業によって教室が活性化することでしょう。
「守谷ふるさとづくり」をテーマとする専門コースは、過去だけでなく、現在と未来の守谷を作る方向で開講しますから、最後には受講生が自分の考えを発表する機会を設けます。ここから、具体的な協働の提案が生まれることも期待されます。
「緑と人の健康」をテーマとする専門コースは、緑によって人が癒されることを深く追究します。緑を活かしたまちづくりの真髄に迫ることでしょう。
これらとは別に、オープンコースという自由な短期コースが開講されます。イオンタウン守谷を会場とした若者主体の「Thursday night in MORIYA Part2~僕らの10年後の守谷~」と、広報誌に携わりたい人に向けた「Wordで作る広報誌―初級」、という2コースです。
4月は、心機一転、何かを始めるに相応しい新緑の季節です。ひとつ、あなたも、もりや市民大学に接してみてはいかがですか?人生に新たな収穫が得られるかもしれませんよ。
3月の学長ブログ
今月3月8日は、渋谷駅で鎮座しているハチ没後80年の命日でした。ハチは「忠犬ハチ公」と呼んで親しまれ、海外でもリチャードギア主演の映画「HACHI、約束の犬」などで良く知られています。
そのハチの飼い主は上野英三郎という農学博士です。実は、私の6代ほど前の東大教授でした。正確に言うと、上野博士は明治末期に農業工学担任の初代教授となり近代日本の耕地整理を指導した人です。その後、この分野が発展して農業土木学となり、私もその中の1分野である「環境地水学」という研究室の教授を勤めた次第です。
さて、このハチと上野英三郎博士は、別々の思い出の中に記憶されてきましたが、この3月8日の命日に80数年ぶりの再開を果たしました。ハチが上野博士に飛びつき、全身で喜びを表している姿が、見事なブロンズ像となって東京大学農学部キャンパスに再現したのです。私もこのブロンズ像建立をお世話する会に関与してきましたので、感無量です。除幕式には多数の市民が押し寄せ、多くの報道機関もカメラを構えていましたので、テレビニュースを見た方もおられるでしょう。私は、改めて、ハチが日本人に広く愛されていることを知りました。
愛犬家の皆さん、そして、近代日本の農業の礎を築いた人物を見てみたい方、どうぞ、東京大学弥生キャンパスに足を運んでみてはいかがでしょうか?地下鉄南北線に乗って東大前駅で降り立つと、徒歩1分でハチと上野博士に会うことができます。そして、犬と飼い主との心の交流を感じ取れるような素晴らしいブロンズ像を見ることができます。
2月の学長ブログ
菅原文太さん、と言えば「トラック野郎」ですか?その文太さん、実は「アフガンに命の水を」(2009年、企画:ペシャワール会、制作:日本電波ニュース社)というDVDの語り手になっています。大学の教室でこのDVDを学生に見せると、大きな感動を与えます。それは、中村哲という私と同世代の医師の壮大な取組みのお話です。
中村哲医師は、1984年からパキスタンやアフガニスタンで診療活動を行って多くの命を救ってきましたが、「医療活動だけでは命を救えない。大干ばつに苦しむ砂漠地帯に水路を作って水を引き、食料生産すれば数十万の命が救える」と思い立ち、全長24㎞の水路建設という途方もない計画を立てた人です。その事業は2003年着工、2009年完工となり、実際に作物栽培を行って緑の大地を出現させました。資金は全て日本からの寄付金によりました。この工事には、現地住民が最大700人も自主的に参加しました。
彼らの声を聴いてみましょう。
「現地に来て初めて人の情と絆に触れた」
「汗を流して働くことの嬉しさを知った」
「ドクター・サーブ、村はイード以上のお祭り騒ぎです。私たちも、こんなに誇りに思ったことはありません」(ドクター・サーブは中村医師の愛称、イードは断食明けの祝日)
「これが作れたのは、異教徒である筈の日本人たちの献身的な努力である。最近、『異教徒』を敵呼ばわりするイスラム教徒がいるが、これでも『敵』か」(アフガニスタン治安担当者)
「おお、ドクター・サーブ、万歳!ありがとう!アフガン人として感謝の至りです。これ以上の助けはないでしょう」(13km水路完成後、通水試験実施日)
これらは、著書「医者、用水路を拓く」(中村哲著、石風社 2007年)の中で記述された現地住民の生の声です。住民が希望と誇りを得たことを、これ以上説明する必要はないでしょう。そして、これこそが究極の「協働」ではないか、と思いました。
私は、中村医師とお会いしたことはありませんが、現地の人を思いやり、心を強く持って用水路を拓き、そして今も継続して医療活動と技術提供を両立させているペシャワール会の活動を、共感を持って見守っていきたいと考えています。
1月の学長ブログ
新年あけましておめでとうございます。今月のテーマは「初笑い」です。協働のまちづくり、というテーマを追求しているもりや市民大学では、安倍内閣官房が発行している「ふるさとづくりガイドブック」を入手し、新年第1回目の運営委員会にそのコピーを配布、参照しました。すると、その有識者会議座長である小田切明治大学農学部教授の一文が目に止まりました。
小田切教授によると、まちづくりには3つの「者」が必要だそうです。それは、「よそもの」「わかもの」「ばかもの」です。「よそもの」と言えば新住民のことですから、守谷では事欠きません。「わかもの」でいえば、平成26年12月1日現在の守谷市民平均年齢は41.36歳です。確かに、守谷では35~44歳人口が最大なのです。十分若い、と言えるでしょう。さて、「ばかもの」です。小田切教授によると「心底ふるさとを愛し、地域内で新しい風を起こそうとするアイディアマン(orウーマン?)」のことだそうです。
運営委員会では、守谷に「ばかもの」は居るかなー?という議論に進みました。その時、発言がありました。「夜の6時7時に集まって、遅い時間まで熱い議論を続けているこの市民大学運営委員会こそ、“ばかもの”の集まりじゃないの?」と。そこで、会議は一気に爆笑、反対者ゼロで結論が出てしまいました。
そんな次第で、今年の運営委員会は大笑いで幕を開けました。昔から「笑う門には福きたる」と申します。もりや市民大学にも福を招き入れつつ運営して行きたいと思います。市民の皆様のご参加、ご協力を心から願う次第です。