学長ブログ
6月の学長ブログ
4年に1回開催される国際土壌科学会という大会に出席してきました。開催地は韓国済州島(チェジュ島)、130国以上、2500人以上の参加で、盛大でした。私も、米国、オーストリア、オランダの研究者と4人で一緒に昼食を共にしてこれからの土壌科学ジャーナル(専門誌)の編集方針を議論したり、海外の友人知人たちと再会したりと、国際色を楽しんできました。
ところで、今回の開催趣旨は「健全な土は世界の平和と人間の命の源である」というメッセージを発信することでした。このテーマに沿った国際学会としては成功していると思いますが、私としてはもう一つ物足りなさも感じました。その理由ですが、個々の研究発表の内容とレベルについて、これは、と目を見張るような新発見や新理論といったものに、あまりお目にかからなかったからです。それよりも、世界のこと、地球全体のことを考えて、個別分散化した専門分野の協働を進めること、といった目標が大きな支持を集めていました。
こういった傾向、つまり“個々の発展も良いけれど、大きな目標に向かって協働しようよ!”という呼びかけは大いに賛成ですが、その言葉に酔ってはいけないのではないか、と考えさせられた次第です。そういえば、「自分の言葉に酔っている」という批判、どこかで耳にしたことありませんか?
私の国際土壌科学会も、大会は成功したかに見えますが、自分の言葉に酔っただけ、という批判を浴びないよう、内実を固めることの重要さを改めて考えた次第です。何が大切か、という本質的な問いかけは、いつも忘れてはいけませんね。
5月の学長ブログ
1月の学長ブログでご紹介した冬休みの宿題、その結果について、しばし考えさせられました。若者(大学院生です)の自慢話が、素晴らしかったのです。曰く「成層圏まで行った」「集中力がある」「日本全国47都道府県と年賀状交換している」etc。
「成層圏まで行った」大学院生、実は学部生時代にワンダーフォーゲル部に在籍して登った山の高さの合計が約40kmで、その高さは成層圏に達している、という「自慢」でした。登山をどう自慢するか、その表現力に工夫と独創性が見られました。「集中力がある」大学院生は、何と5歳からバイオリンを引いていて、大学のオーケストラで一番前の座席でバイオリンを弾いていた、という才人であり、その演奏において集中力を磨いたそうです。圧巻は「日本全国47都道府県と年賀状交換している」大学院生でした。学部生時代に国内全ての都道府県の農家を泊まり歩き、その後全ての県の農学部学生に呼びかけて「全国の学生と共に日本の1次産業を盛り上げる」という理念の学生団体を立ち上げ、その活動により農林水産大臣賞を獲得していました。確かに自慢してよろしい。かくして、私は思い至りました。今の若者、大いに期待できる、と。
学生時代に独創的な活動を行い、就職活動では平均50社近くの面接を受け、日常的にスマートフォンやインターネットで広いネットワークを持っている若者たち、彼らの視野は、ひょっとすると、終身雇用だけで退職を迎えた高齢者よりずっと広いのかもしれません。
4月の学長ブログ
春が来ました。桜は散りつつあります。公園や学校、道路沿いの木々を見ると、内側の枝がすっぽりと払い落され、外側の緑が良い形で残されている、手入れの行き届いた姿に整っているものが少なくありません。私も真似をして、我が家のヤマモモの木に手入れし、枝振りを整えてみましたが、出来上がりは今一つです。このように、自然物に手を入れることをどう感じるかは、人によりずいぶんと異なるようです。私が教えていた大学キャンパスでは、4本のヒマラヤスギが並んでいました。しかし、あまりにも巨大化しすぎて、周辺が薄暗くなってしまいました。そのため2本を切り倒し、2本は残す、という方針を固めたところ、少数ながら伐採反対の意見がありました。
このように、自然に手を入れるべきか、あるがままに任せるか、はいつも議論が分かれます。最近、日本全体の人工林について、密生しすぎの弊害が指摘されており、強度間伐という方法が検討されています。人工林の杉やヒノキを、約半分切り倒すという方法です。こうすると、日光が地表面にまで到達し、下草が元気になって土壌侵食が抑制され、雨水も良くしみ込むようになる、ということです。人間が手入れすることによる自然環境保全、という考え方が、進んできているな、と思います。
3月の学長ブログ
ウクライナ情勢が連日報道されています。私は土壌科学者という立場から、マスコミ報道とは違った側面で事の成り行きを見守っています。それは、ウクライナの土壌のことです。実は、ロシアという広大な国の中で、農業生産力の高い肥沃な土は、主に国の南西部に存在し、その土はチェルノーゼムという名称で世界に知られています。皆さんも、世界の穀倉地帯、という知識を中学の社会科などで学んだことはありませんか?世界の穀倉地帯は、チェルノーゼムというカルシウムと有機質に富む肥沃な土を持つ地域において存在します。そして、ウクライナにはこの土が豊富に分布しているのです。争いのもとになっているクリミア半島でも、この土が豊富です。特に農村に広がる麦畑のほとんどはチェルノーゼムのようです。私は、ロシアもチェルノーゼムという肥沃な土壌地帯を確保したいのではないか、という穿った見方をしています。黒々とした有機物に富む肥沃な土は、まさに世界の穀倉地帯と呼ぶにふさわしい生産力と田園風景を誇ります。チェルノーゼムは誰のものか、ロシアか、ウクライナか、という図式で今の問題を考えているのは、私(もしかしたらプーチンさんも)だけでしょうね。
2月の学長ブログ
8日の大雪には、びっくりしました。通勤や所用で外出していた方々は、大変な思いをされたことでしょう。お疲れ様でした。家の周りの雪かきは、何やらご近所力を発揮した行事のような賑わいになりました。
さて、もりや市民大学は、平成26年度コースの設計に大わらわです。どうしたら市民のニーズに応えられるか、若い世代や子育て世代を、どうやって市民大学に招くか、市民大学の修了者が協働のまちづくりに参加していくプロセスを、どう設計するか、など、考えることはたくさんあります。何よりも、市民大学を知っていただくことが大切だろう、ということになり、平成26年度では従来と同様の「総合コース」「専門コース」に加えて「オープンコース」を併設することにしました。
「オープンコース」は、いわば体験コースのようなもので、市民大学を身近なものと感じていただくために設置します。テーマとしては、子育てお母さんのための講座、あるいは、親子で夏休みを満喫するための講座、定年や退職をひかえた人のための講座、などです。各講座とも、3回程度とコンパクトにまとめ、気軽に参加することによって市民大学の良さを知っていただこう、という企画になります。守谷広報等に掲載されますので、ぜひチェックしてみてください。