学長ブログ
2月の学長ブログ
もりや市民大学の運営委員会を重ねながら常々思っているのですが、我々が外部の方に講師を依頼すると、不思議なことにまず断られることがありません。非常に限られた予算の中で講義をお願いするので、交渉に際しては恐縮しつつお願いする、という具合なのですが、その際、断られるケースは、「どうしてもスケジュールが合わない」「所属組織からの了解が得にくい」といった理由がある場合で、それ以外では、皆さん快く引き受けてくださいます。このことに感謝しています。
で、最近特に感じる特徴ですが、お引き受け頂いた講師の方が、「ここでやめてしまうのはもったいない、もっと先に進めましょう」といって、講師のリピーターを率先して引き受けてくださることです。この現象については、我々運営委員も、やや驚いています。受講生が「もりや市民大学、おもしろい」といってリピーターになって下さるのは大変ありがたいのですが、まさか講師の方々まで「もっとやりましょう」というリピーターを希望される、これは何でしょうか?
思うに、もりや市民大学の教室は、いわゆる「手応え」があるのかも知れません。市民向け講義ということで、できるだけ分かりやすく話をされるよう、講師の方々は工夫をしてこられます。講義の後は、質疑応答が続きます。この時間帯で、講師の先生方は「ここの受講生はちょっと違う。生涯学習のように知識の充実を求めているだけではなく、守谷を良くするために自分たちでできることは何か、を真剣に求めている」と気付かれるのでしょう。
以上のような最近の特徴は、例えば平成28年後期のコミュニティービジネスを担当された柳田公市先生、健康づくりニュースポーツを担当された徳田太郎先生、そして、3月25日予定の公開講座講師、宇佐美彰朗先生までもが、次の専門コース設計に向けて準備中だったり考慮中だったりされています。オープンコースの講師の方々からも、単発で終わらせず継続を、と望む声が多く出ています。全く有難いことで、運営委員一同は、お招きしている先生方に感謝すると同時に、「うちの受講生は、そんじょそこらの市民大学受講生とはちと違いますぞ」といったささやかな自信も抱きつつあるのです。ま、そうは言っても、目に見える成果を出していかなければ、ささやかなままで終わってしまいます。受講生の皆さん、リピーター先生の多いわが市民大学、稀勢の里といっしょに「恩返し」を頑張りましょう。
1月の学長ブログ
新年、明けましておめでとうございます。今年一年が、皆様にとって良い年であるよう、心から願わずにはおれません。平成29年、2017年、どちらもやや記憶しにくい数字で、書類を書くとき気をつけないと間違えそうです。もう一年先は覚えやすい年号ですが。
さて、2017年はどんな年になるのでしょうか?まずはアメリカのトランプ新大統領です。オバマさんが1月10日に行った最後の演説で、アメリカは「自由に選出された1人の大統領から次の大統領へと力が平和裏に移行するのです。ちょうどブッシュ大統領が私に対してしたように、私も次期大統領トランプに、私の政治ができる限りスムーズに移行できるように、完全に引き渡します。」と述べました。しかし、アメリカのマスコミは、この退任演説自体が前例の少ない異常事態であり、トランプ新政権への危機感の表れではないか、と分析しているそうです。
東京大学の元総長である佐々木毅氏は、アメリカ国民がトランプ政権を選択したということは、「経済のグローバル化と一国民主政との矛盾」が噴出したもの、と解説しています。つまり、経済のグローバル化を推し進めていくと、一つの国の中での平等、公平、安心、平和といった民主主義の根幹が揺らいでしまう、かといってグローバル化を拒絶して一つの国内だけの国民の幸せを孤立的に求めていけば、グローバリズムに真っ向から対抗する保護主義に陥ってしまう、という訳です。確かに矛盾です。
2017年は、歴史の大きな矛盾を全人類が体験することになりそうです。さて、守谷市民の皆さん、こうした世界の動きが、どうやら我々の日常的な市民生活と無縁ではないようです。そこのところを意識して、市民大学をますます充実させ、時代に遅れをとらず、良い時代を築く為、引き続き学びの機会を大切にしましょう。もりや市民大学では、時代の動きを見ながら、さらに充実したコースを設計して皆様をお待ちします。
12月の学長ブログ
予想外の論文原稿を依頼されて困っています。私は、土と水というシンプルな自然物が見せる不思議な現象を基礎的に研究することが専門で、室内実験や理論解析が得意でした。土の中では水蒸気はどんな風に動くか、とか、平地に浸透する雨水と傾斜地に浸透する雨水に違いがあるか、とか、土壌微生物が関与すると土の中の水やガス(CO2やO2)の移動はどう変化するか、などといった、すぐには役に立たない研究ばかりやってきました。今回、オートファジーの研究でノーベル医学・生理学賞を受賞された大隅博士も、すぐに役立つ研究にばかりお金を注ぎ込まないで、もっと基礎研究を大切にしなさい、と口を酸っぱくして主張されています。
さて、そんな私に、ある科学雑誌編集部から、「地球温暖化で水資源や耕作適地はどうなってしまうのか?」を4回連載で論文にせよ、という注文が届きました。まさに、役に立つ研究です。しかも、今現在の問題だけでなく、未来予測に基づく人類の危機を説明せよ、という訳です。学生の期末試験でレポート課題に出したいような良問です。
おかげで、今年の年末、年始はこの連載論文に頭を悩まされ、きっと追い詰められた夢ばかり見ることでしょう。初夢??そんな楽しい話ではなくなりました。しかし、気候変動や温室効果は、地球全体にそれほどの暗雲をもたらしているのでしょうか?ちょうど、福島第一原発事故後の放射性物質拡散の問題と類似していて、「非常に深刻な問題である」から「それほど騒ぐ必要がない」まで、専門家の間でも広く意見が分かれています。同様に、地球温暖化問題も、「このままでは人類は滅びる」から「それほど大騒ぎする必要なし」まで、やはり見解が分かれます。一般社会人は、要するにどうなんだ、と科学者や専門家を問い詰めます。今回、私が問い詰められた次第です。
これからこの難題に立ち向かう私は、自分の立ち位置をどこに置くか、忘年会・新年会の宴会席上でも悶々と悩んでいるわけです(はたから見ると楽しく酔っ払っているように見えると思いますが・・・)。私としては、何事にせよ「ファクトファースト」で行きたい訳でして、そのファクト(事実、実態)を見つけ出すことに苦労します。こうして、「私は困っています」と白状して今年を終えたいと思います。皆様、良いお年をお迎えください(できれば私も)。
11月の学長ブログ
11月5日は、もりや市民大学11月開講コースの開講式でした。当日出席された入学者50名の方々に入学時アンケートへの記載をお願いし、回収しました。その結果を見ると、入学動機は「自治会や町内会の活動など、まちづくりに関する様々な地域活動に興味を持っていた」「自分の住む町について知りたいと思っていた」が約60%を占めていました。また、協働のまちづくりに今後参加したいかどうかを尋ねたところ、今回初めて市民大学に入学した方々の37%、再入学(リピーター)した方々の68%が、それぞれ参加したい、と回答されました。
もりや市民大学で開講する各コースは、毎回斬新なコース設計となっており、繰り返しの講義はほとんどありません。そのため、何回入学しても新しい知識が吸収でき、協働のまちづくりに関する新たな視点や手法を学ぶことができます。私としては、プログラムを見て初めて入学される方も、やみつきになって(!?)何度でも再入学される方も、ともに歓迎したいと思っています。
それで、「教育効果はどうなのだろう?」という点がしばしば運営委員会の話題になります。延べ600人を超える修了生を輩出しているもりや市民大学は、「協働のまちづくりを担う人材を十分に生み出しているだろうか?」と自問自答する次第です。さて、客観的に見て、どうでしょうか?私は、人材育成はかなり上手く行っていると自画自賛しています。市民大学の修了生は、互いのネットワークを活用するだけでなく、それぞれお住まいの地域でも活動の輪を広げておられます。コミュニティーづくり、認知症予防の地域活動、防災マップ作り、緑のまちづくり、などなど、具体的な動きを掘り出せば、いくらでも出てきます。
これまでの4年余のもりや市民大学の受講生を見ていると、何よりも皆さんが明るく元気になったように思えてなりません。笑顔が増え、動きが生き生きとしておられます。教室の雰囲気も、年々改善され、講師の方との双方向授業づくりも初期に比べて格段に充実してきました(言いたい放題言える、という意味かも知れませんが・・・)。次の目標は、市民活動支援センターから遠いところに居住されている守谷市民がこの大学に入学し易いような手立てを考えることです。市民大学の教室(開講場所)の移動なども視野に入れながら、今後の展開を考えているところです。
10月の学長ブログ
秋です。突然、秋が訪れたように感じます。前日はクーラーを効かしていたのに、今日は暖房が恋しい。季節の変わり目とはこんなもんだったかな?と今更ながら驚いています。
この秋、「科学者は災害軽減と持続的社会の形成に役立っているか?」という学術フォーラムが開催されます。「役立っている」、「役立っていない」という答えを見つけよう、という訳ではありません。学術的に優れた研究が即社会の役に立ち、社会に評価されるとは限らないことは、今回のノーベル医学生理学賞「オートファジーの仕組みの解明」を受賞した大隅良典東工大栄誉教授の例でも明らかです。この研究は、細胞の中のたんぱく質やそれを覆う袋のような物質の分解やリサイクル利用につながる話ですが、即社会の役に立つ、とは考えられません。その大隈氏は、競争的資金に走る研究費予算には批判的で、基礎科学の重要性を強調されているそうです。
では、この問いは、何を意味しているのでしょうか?学術フォーラムでは、「研究者から見た社会への説得力」「水とグローバルリスク」「土壌と持続的食料生産」「気象災害」「地質と地盤情報」「火山災害」「地震災害」「災害と地球環境」「フューチャーアース」などのテーマで、いろいろな専門分野の研究者が科学と社会の関係について持論を展開し、意見交換を行います。何を持って「役に立つ」と言えるのか、その問いは、研究者が常に頭に置き、自らの研究を通してその答えを求めるのです。
さて、もの思う秋に相応しいこの学術フォーラム、よろしかったらどうぞご参加ください。11月13日(日)13時から、地下鉄千代田線乃木坂駅から1分の日本学術会議講堂で開催されます。参加費無料です。問題は、この中の1件を私が担当することです。私は農学分野の土壌物理学・環境地水学を専門としています。さて、私の担当課題はどれでしょうか?・・・・今月のブログ、しょうもない設問で終わります。