学長ブログ

7月の学長ブログ

 自粛生活から、「新しい生活様式」へと向かう日々、皆様どのようにお過ごしでしょうか?この間、何だか時間の流れが速くなっているように感じています。中国で発生した新型コロナウイルス感染が、全世界に広がり、半年以上経過したいま、日本国内の毎日の感染者数をドキドキしながら見守っています。今思うと、2月、3月、4月、5月、6月に何をしたか、と考えても、特段に記憶に残るイベントが残っていません。ただ、時間だけが高速で過ぎ去った感があります。

 そんな中で、特に印象的なのは、社会全体のデジタル化が急速に進んでいることです。大学の現役教員は、オンライン授業は勿論のこと、来年の大学入試でもオンライン入試を考えざるを得なくなっています。ご存じかもしれませんが、「ミラーワールド」という新しい社会モデルには驚いています。なんでも、現実の「ミラー」をネットワーク中に構成すると、その中でヒトやモノといった現実とミラーワールドの中の仮想現実とが一体化しているような世界を構築できる、というのです。

 昔、SF小説でタイムマシンと瞬間移動が出てきたときは、「想像するのは自由だね」とバカにしていましたが、その瞬間移動とほぼ同じことができる技術の実現が間近に迫っているといいます。例えば、ミラーワールドの大学では、教室にいる学生の半分は現実に出席しており、半分はネットワーク参加しているのに、その差をほとんど感じずに授業ができる、さらには、実験にもネットワークで参加できる、といったイメージだそうです。これはもう、瞬間移動しているのと同じではないでしょうか?

 「新しい生活様式」がどんなものか、分かりませんが、オンライン会議は実際にやってみると便利、という声も聞かれます。もりや市民大学でも、一部オンライン化の検討を始めます。新しい市民大学を模索せざるを得なくなりました。

6月の学長ブログ

 武漢に、朱という名前の中国人がいます。その朱さんのニュースを共同通信社の5月23日付配信で見かけました。何でも、新型コロナウイルスが広がった武漢在住の日本人が、急遽帰国する際、市当局と掛け合って輸送バスを手配し、全員が無事に飛行場まで移動できるように最大限の尽力をしてくれたと報じていました。https://news.yahoo.co.jp/articles/a8c787684840f25c8761e0df235b658c70c555a4

 「おやおや?よく似た名前の人がいるな」と思いました。というのは、かつて、私が現職の大学教員だったころ、朱敦尧(ズー・ドンヤオ)という中国人留学生がいたことを思い出したからです。ニュースを見ると、件の朱さんも東京大学留学経験があると書いてあります。これは、ずいぶん近い話だな、と読み進むうち、これは、あの朱さん本人だ、と確信しました。

 そこで、「朱さんが日本人退避のために力を尽くされたことを、初めて知りました。まず、心からの御礼を申し上げます。本当にありがとう。」というメールをご本人に送りました。すると、朱さんから「皆さんとの出会いは私の人生として、幸せの種です。それを大切にして、ずっと。今回、日本からたくさん感謝のことばをいただき、大きい喜びです。映画になってもらいたいという方がいらっしゃる、確かに、永遠に経験できないシーンがいろいろ、ありました」との返信。

 こんな偶然の再会があるとは、夢にも思いませんでした。朱さんは、私のもとで環境地水学という専門分野の博士号を取り、研究者の道に進む予定でした。しかし、その後紆余曲折を経て、今では日中を結ぶIT関連会社の会長に上り詰めていました。社員1300人を率いているそうです。新型コロナウイルスが終息したら、また日本に来る予定だそうです。その時、お会いしましょう、と約束しています。楽しみです。守谷市民大学にご案内して、臨時講師でもやってもらいましょうか?

5月の学長ブログ

 すでにご承知かもしれませんが、もりや市民大学は、今年1年間の休校を決めました。できるだけ同じ内容のプログラムを、来年の4月以降に開校したいと考えています。この決定につき、講義を引き受けて下さった講師の皆さん、受講を予定されていた市民の皆さんに、お詫び申し上げるとともに、ご理解のほどを宜しくお願いいたします。

 さてさて、「今日の感染者数は?」が一番の関心事になりました。まず、東京都が100人以下、いやいや50人以下だと、ややほっとします。次に、茨城県内の感染者が0で留まっていると、「良かった」と思います。そういえば、守谷市は?と考えてスマホのMorinfoをのぞき込み、当然ながら感染者なしを確認します。その後、大阪はどうか、全国はどうか、ニューヨークはどうなった?世界は?と関心が広がり、ついにアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の集計にまで到達します。

 この、ジョンズ・ホプキンス大学が気になって調べてみました。アメリカ東海岸のメリーランド州ボルチモアに本部を置く医学系の私立大学だそうです。なんでも、ノーベル賞36人を輩出している、世界屈指の医学部を有するアメリカ最難関大学のひとつとか。実は、私はボルチモアに行ったことがあるので、懐かしく思います。かつて、研究者の卵としてカリフォルニア州に留学していた時代に、飛行機でワシントンへ行き、スミソニアン博物館を見学していた時のことです。幼い我が子2人(男)が、「こんなとこ、つまんない」とむずかるので、止むを得ず地図で(当時スマホはありませんでした)遊園地の所在を探し、ワシントンからボルチモアの遊園地へアムトラック鉄道で移動したのです。子供らは、こじんまりした遊園地でたいそう満足していました。

 あの、思い出のボルチモアにこんな立派な大学があったとは、知りませんでした。あれから37年にして初めて知ったのです。それにしても、世界中のコロナウイルス感染に関わる統計データを一手に引き受け、それを瞬時に世界へ発信し続ける仕組みは、どのようなものなのでしょう?一大学が国を超えて世界の状況を把握し、政府や国際機関よりも高い信頼を得てその情報を発信するという姿に、感動と驚きを禁じえません。何人くらいのどんな人が実務を担当しているのでしょうね?スゴイです。

4月の学長ブログ

 新聞を開く、ラジオをつける、テレビをつける、スマ―トフォンを開ける、どれをやっても、目に飛び込んでくるのは新型コロナウイルスのことばかりです。COVID-19と呼ぶ人もいますが、これはウイルスのことではなく、感染して起こす肺炎の名称だそうです。

 そんな中で、読書はささやかな癒しを与えてくれます。外出を控えよ、と言われてから私が読んだ本をご紹介しましょう。図書館に依頼して半年間待ち、ようやく順番が回ってきた本、イタリア人理論物理学者カルロ・ロヴェッツリの著書「時間は存在しない」を読んでみました。タイトルに引かれて読みましたが、原題はThe Order of Time(時間の秩序)でした。翻訳者と出版社がインパクトを強めるために意訳したようで、私も見事につかまりました。「時間」をめぐり、アインシュタイン、ループ量子重力理論、エントロピーの増大、スピンネットワーク、など、強烈なキーワードを用い、分かりやすいたとえを多く使って読ませます。分かったような気にさせる本でした。もう一冊は、1000ページという分厚い「虚数の情緒」(吉田武著)です。中学生から読める独学のための本だそうです。自然数や九九の計算から始まり、無理数、実数、虚数、指数、振子、重力へと進み、最後には場の量子論、量子脳力学まで連れていくというとんでもない本で、一人の著者がここまで広くカバーできるものか、と驚嘆します。その中で、野球のバッティング理論も展開し、これが案外参考になったりするのです。なぜか、愛読書の1つになりました。

 難しい本ばかり読んでいるとお思いでしょうが、ご安心ください。一方で、アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」(上・下)を読みました。ミステリの最高峰などと宣伝されていたので、どれどれ、と手にしてみました。「それかよ?そう持っていくの?」とびっくりしました。面白いけどちょっと釈然としません。気になって、同じ作者の「007逆襲のトリガー」も読みました。おなじみジェームスボンドが活躍するサスペンス。まあ、いいかな、と許容しました。同じ著者によるもう一冊「メインテーマは殺人」は手元にあって、これから読みます。

 こんな具合です。私の友人(北大の名誉教授)は、こんな時だから、と土壌学の専門書を読み直しているそうです。自分の専門分野の周辺を勉強しなおす、という考えも納得です。そこにも新発見があるのだそうです。家に閉じこもる日々、何か楽しみがないといけませんね。そうそう、「ジャズ・スタンダード・バイブル(ジャズ・ピアノ・エチュード)」も、私の新たな一冊に加わりました。

3月の学長ブログ

 残念ながら、新型コロナウィルスが収まらず、今日(3月13日金曜日)のニュースではニューヨーク株式市場ダウ平均株価が2352ドル下落し、日経平均株価が17000円を下回るなど、その影響が拡大しています。無観客大相撲、春の選抜高校野球大会中止、東京ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンの休業、ブロードウエーのミュージカルやオペラの休演など、信じられないニュースが飛び交っています。そして、ついに東京オリンピック開催の可否についても現実的な判断を迫られるに至りました。

 そんな中、もりや市民大学でも、2月29日「総合コース:花のまちづくりの活動について」を録画ユーチューブ方式への切替え、3月7日の総合コース修了式中止、3月14日「オープンコース:はじめてのグリーンづくり講座」中止、3月18日運営委員会の中止、3月28日の公開講座中止、などを決めました。時間と労力を注いで実現までこぎつけた様々な計画が、このウィルスの影響で中止や延期に追い込まれています。それでも、私たちは6月開講コースの実現をめざします。

 新聞やテレビなどでは、新型コロナウィルス関連ニュースでほとんどが覆われる中、ところどころで5月以降のイベント案内や海外旅行案内などが出ています。そうしたコマーシャルを見るにつけ、この問題が何とか収まってくれるよう、そして一日も早く普通の日常が戻ってきますように、という、我々と同じ願いを感じずにはいられません。もりや市民大学も、今年の新しいプログラムを用意し、いま、まさに市民の皆様に広くお伝えしようと準備中なのです。

 世界中での「今後どうなる?」との思いが、対コロナウィルスへの有力な反撃力となるよう祈るばかりです。One Earth、地球は一つ、といった標語が、こんな形で現れるとは思ってもみませんでした。SF小説をはるかに凌ぐ、ウィルス対人類の壮絶な闘い、この結末を正しく見通すシナリオはありません。「明日は我が身」がますます現実味を帯びてきました。手洗いとうがいを励行し、じっと耐える、それしか見えません。