2013年8月の記事一覧
8月のブログ
再び川崎市民アカデミーの話です。実は、私を講師で招聘した東京大学名誉教授は、この4月からアカデミーの学長に就任されました。ご専門は森林科学で、最近「森林飽和―国土の変貌を考える」(NHK出版)という珍しいタイトルの本を出版されました。現代日本は、森林の飽和状態、つまり、「歴史上かつてないほど豊かな緑を背景にして生きている」という驚くべき事実が記述され、注目されています。
ところで、私たち人間は「飽和」しているでしょうか?言い換えれば、「満たされている」でしょうか?恐らく多くの方が、まだ、満たされてはいない、もっと知りたい、もっと豊かでありたい、もっと高まりたい、と考えておられるでしょう。つまり、私たちは「不飽和」な存在です。そして、飽和になりたいと思うとき、力を発揮します。不飽和は力の源です。そう考えてみると、満たされていない状態、「不飽和」な存在は、実は成長する力を内包した若々しい姿でもあるのです。市民大学は、不飽和な人を歓迎します。そう、その人こそ、明日の飽和へ向かって成長する人、つまり本学の学生なのです。
やや、我田引水に傾きました。一人で盛り上がってしまいました。これには理由があります。なぜなら、私は不飽和土壌の専門家だからです。水で満たされていない土壌が不飽和土壌です。不飽和土壌は、もっと水を吸い込みたくてうずうずしています。そういう土壌の振る舞いを研究してみると、地球上の様々な物質循環の姿が見えてきて、興味が尽きません。そんな研究人生を送ってきたので、「飽和」「不飽和」に過剰反応した次第です。研究者は、やっぱり変人がなるもの、と思われたことでしょう。否定しません。