11月の学長ブログ
2021年8月に出版されたデジタル・ファシズム(NHK出版新書、堤未果著)を読みました。タイトルに興味を持ったからです。世の中はどんどんデジタル化が進んでいて、それに後れを取ると、何だか疎外感を持つようにならないか、といった漠然とした不安もありました。特に、高齢者はスマホ扱いやタッチパネル操作に対し、「やりにくいなー」という印象を持っていますから、さらにデジタル化が進めば、より一層取り残された感覚が強くなると思います。
そこに登場したのが、このデジタル・ファシズムという本でした。この本の特徴は、デジタル化について多くの通説、常識を取り上げ、「だが、本当にそうだろうか?」という疑問を全部で11ヵ所も指摘しているところです。たとえば、「今やキャッシュレスは海外では常識ですよ。日本はデジタル後進国。」という通説、デジタル技術が「少子高齢化や地方の過疎化、貧富の格差など、今日本が抱えるいくつもの課題が、解決されてゆく」という日本全国デジタル化(Society5.0)計画、「パンデミック危機が起きたことで、今や教育のデジタル化は必須となった」というOECD(経済協力開発機構)レポートの主張、などを取り上げ、その一つ一つに「だが、本当にそうだろうか?」と疑問を投げかけます。
この本に書かれている内容をどう評価するかは、読者それぞれが決めることですが、私は大いに影響を受けました。やがてデジタル・ファシズムがやってくる、と著者が投げかける危惧についても、決して楽観できないな、と思いました。その一方で、自分の日常生活を振り返ると、スマホ、パソコン、クレジットカード、スイカ、WiFi、ブルートゥースなどのお世話になっているのも事実です。
もりや市民大学では、2021年度はZoomを利用したハイブリッド方式で各コースを運営し、大いにデジタル技術に助けられましたが、別の視点で考える必要も、この本が教えてくれました。2022年度以降のもりや市民大学でも、デジタル化時代をどう読み、どう生きるか、新しい指針を示してくれるような講師を見つけ出して、ともに学んでいく必要がありそうです。