学長ブログ

5月の学長ブログ

 「新しい酒は新しい革袋に盛れ」ということわざがあるそうです。新しい内容を表現するにはそれに応じた新しい形式が必要だ、という意味です。もりや市民大学でも「新しい酒」を考える時期が近づいています。開校以来12年を経過したもりや市民大学にどんな「新しい酒」が必要でしょう?令和6年度は6月8日に開講式を迎えます。人気の「守谷を知るコース」は定員35名のところ希望者が10人近く超過しているようです。「いきいきシニアコース」はまだ少し余裕があり「まちづくり協議会コース」は大分余裕があります。市民科学ゼミの希望者は前回を上回る希望者があります。

 

 開講式を間近に控え、従来どおりのコース設計で開講を準備している令和6年度のもりや市民大学は、令和7年度に向けて「新しい革袋」を考えることにしました。つまり新しい形式を模索します。それには、担当者の世代交代も重要です。12年の歴史を超え、新たな時代の要請に応えるための新たな形式、「新しい革袋」にご注目頂きたい。

 

 12年前、もりや市民大学発足当時は、すでに開講している他の自治体における市民大学の先例に学ぶことが重要でした。中でも、うらやす市民大学からは、良き先例として学ぶことができました。その後、ご承知のように2019年末から2023年の間に何度も新型コロナ感染の波が押し寄せ、もりや市民大学の運営も2020年度の募集・開講を断念しました。それでも2021年度以降はZoom利用によるハイブリッド形式の講義を取り入れ再開することができたのは、運営委員の自主的努力の賜物でした。コロナ禍の中、市民大学をハイブリッド形式で開講したのは、もりや市民大学が全国で最も早かったのではないかと自負しています。

 

 このような困難な時代を経た今、もりや市民大学は過去の成果に甘んずることなく、新しい形式を求めて再出発したいと考えています。「新しい酒」と「新しい革袋」両方を求めています。そのための世代交代もしっかり進めます。この再出発が成功したら、私も是非「新しい革袋」に満たされた「新しい酒」を飲みたいなー、と願望する次第です。飲み過ぎに注意しつつですが。

4月の学長ブログ

 4月14日(日)、もりや市民大学公開講座が開催され、「貝塚が語る守谷の土と水」というタイトルで私がお話しました。多くの市民の方々や守谷市周辺の方々も足を運んでくださいました。誠にありがたく思いました。担当の運営委員から「公開講座もありますが、令和6年度の市民大学開講を紹介して受講申し込みをPRすることも忘れないように」と、しっかり釘を刺されました。

 

 天気が良かったからでしょうか、大変出足が良く、開場時間と同時に入室される方が多く見受けられました。予約なしで当日飛び入り参加の方もかなりおられました。公開講座は、希望者をどなたでも幅広く受け入れる準備をしています。一応、募集期間や募集定員を明示していますが、来て下さる方はどなたでも受け入れたいというのが本音です。

 

 ところで、最近のパンフレットやチラシを見ると、必ずQRコードが印刷されています。今回の公開講座案内や申し込みも、QRコードをフル活用しました。QRコードは、スマホのカメラをそこに向けると容易に関連サイトに繋がります。そのQRコードは自動車部品の日本企業(デンソー)による1994年の発明品だというから驚きです。そして、JIS/ISO規格に従っていれば誰でも自由に使用できるそうです。特許は取っているが、使用はフリー、というおおらかさが社会に受け入れられていると感じます。発明者、原昌宏氏に感謝・脱帽です。QRコードは自分で作成することもできるそうですが、私はまだ自分の手で作ったことがありません。

 

 さて、私がお話した公開講座、カギは国土地理院発行5万分の1地図でした。私が使用したのは昭和61年(1986年)発行のものでした。あの頃、現地調査に当たっては5万分の1地図が必携でした。今ではスマホ1個で地理情報は何でも入手できます。が、広域の等高線図を手に入れようとするとスマホ地図ではなかなか情報が得られず、5万分の1地図の方がずっと便利であることを認識しました。「デジタルよりアナログの方が優れていることもあるぞ」と主張するのは恥ずかし過ぎますが、ちょっとニヤリとしました。

3月の学長ブログ

 牧野富太郎はNHK朝ドラ「らんまん」ですっかり有名になりました。牧野富太郎著、日本植物図鑑(1940年初版出版)は、今でも読者層をつかんでいます。ところで、実は、もうひとり気になる人物がいます。牧野富太郎より10年ぐらい後に東大理学部の助手として採用されていた地理学者、東木龍七(とうぎりゅうしち)という人です。福岡県出身、師範学校の卒業生で、小学校教諭を経て上京、東大助手になりました。やはり学歴の壁などがあったようです。

 

 この方は、地理学・地質学の優れた研究者です。特に関東地方の貝塚を「巡検」という地道な調査方法によって詳しく調べ、貝塚の存在地点を地図上にプロットし、これを繋いだ複雑な地形分布曲線を描き出しました。そして、この貝塚分布曲線は、当時の海岸線と平行しているに違いない、と考察し、その結果、大胆にも「縄文海進」と呼ばれる過去の海岸線を浮き彫りにしました。今から6千年~7千年前の縄文時代、海面は現在より5~7m高かった、というのです。そうでなければ広範囲に広がる貝塚分布の理由を説明できない、と結論しました。この説は支持され、今では定説となっています。

 

 彼は、守谷方面にも「巡検」に来たようです。今の守谷市のあたりで3点の貝塚を地図上にプロットしています。しかし、その後、守谷近傍の貝塚3点を実際に再確認した報告は見当たりません。幻の貝塚、と呼んでも差し支えないでしょう。ところで、私は、最近、偶然の出会いにより、「もしかしたらこれか?」と思われる3か所の貝塚を発見、または確認しました。

 

 幸い、4月14日(日)に市民公開講座「貝塚が語る守谷の土と水」というお話をする機会を得ました。そこで、守谷近傍の3つの貝塚をどのようにして「発見」したのか、そしてその貝塚は、現在の我々の生活とどのように関連しているか、述べてみたいと思います。1件目の貝塚については昨年の市民大学講義でお話しました。2件目の貝塚については市民大学とは別の組織に依頼されて、初めてご披露しました。そして3件目は・・・、いや、公開講座でお話ししましょう。それは意外な「場所」にあったのです。

2月の学長ブログ

 私には、セカンドハウスを持っている友人(高齢者)が3人います。Aさんは人口195万人の都市に住みながら車で3時間離れた人口約1800人の海辺の寒村に一軒家、Bさんは人口12万人の地方都市に住みつつ15kmほど離れた人口約5400人の山村に一軒家、Cさんは東京に住みつつ千葉県の人口7000人の町に一軒家、それぞれ入手して2重生活をしています。

 

 Aさんの海辺の寒村には信号機が1個しかありません。敷地には畑があり、野菜を育てて楽しんでいます。アスパラガスの栽培が得意で、毎年収穫し、上下が逆にならないように注意してこの守谷に送ってくれます。また、冬場に鮭をさばいて寒干しし、鮭トバにして送ってくれます。どちらも旨いです。Bさんの山村は豪雪地帯で、購入した中古住宅の手入れに余念がありません。隣接した水田を借り受けしてお米を栽培するそうです。収穫したら送ってくれるとのこと、楽しみです。Cさんは小さな町の街おこしに尽力することを決意しました。この町に移住してきた若手農業従事者を支援したり、街の歴史を伝える文化遺産を発掘したり、街の魅力度を対外発信するパンフレットを定期的に発行したり、と工夫を凝らしています。

 

 都市に住みつつセカンドハウスを持って自然に近い生活も満喫する、というライフスタイルが、こんなに身近にあることに驚きます。昔は「軽井沢に別荘」という金持ちの贅沢ライフしか知らなかったですが、今ではこんなにも庶民的なライフスタイルに変化しつつあるようです。

 

 守谷市に住む皆さんはどうお考えでしょうか?趣味で細密油絵を描いて水戸の展覧会に出展し、同時に毎週クラシックピアノを習っている守谷市内在住文化人が、実は市の貸し農園で野菜作りを楽しんでいる、こっちの方が多くなってきた、というお話も伺いました。どうやらこうしたライフスタイルは広く定着しつつあるようです。人口減少時代が目前に迫っている昨今の日本、今後、空き家率も高くなる一方だそうです。そろそろ、空き家をセカンドハウスにして楽しむ生活を構想してもよろしいかもしれません。私?は、今のところ時間的な制約が多いので、もう少し後で考えてみます。

1月の学長ブログ

 

 ある出版社から郵送されてくる月刊雑誌があります。その中で、軽妙な語り口が割と気に入っている記事に「言語学パーリ・トゥード」という不定期シリーズ物があります。著者の川添愛氏は言語学者であり、たとえば、「日本語は世にも曖昧な言語なのか」という小文で、英語でも日本語と同じくらいの曖昧さが沢山あることを紹介したりしています。分かり易くて面白い文を届けてくれるので、私も隠れファンの一人なのです。

 しかし、問題は「パーリ・トゥード」って何?という疑問の方です。これはポルトガル語であり、ブラジルの格闘技の名称なのだそうです。しかも、「何でもあり」という意味を表す言葉です。つまり、私が愛読している記事の名称は「言語学、何でもあり」と解釈する次第です。聞いたことのない「パーリ・トゥード」なる標題を、あたかも誰でも知っているがごとくに使用する感性、そのことについて、私の頭が混乱し始めます。どうしてここにブラジルの格闘技名を使うのだろう?と不思議でなりませんが、なぜか「パーリ・トゥード」という聞きなれない言葉が耳に残って離れません。 

 そういえば、最近、このような意味不明の言葉があふれていると思いませんか?私は「アントレプレナー」という表現にもついていけません。ところが、2023年5月に、政府は小、中、高において「アントレプレナー教育」に力を入れる方針を発表したそうで、今や「アントレプレナーシップ」などの用語が世間を駆け巡っています。「アントレプレナー」はフランス語であり、起業家・事業家を指す言葉です。「アントレプレナーシップ教育に力を入れ、そのインキュベーションに貢献する」と言われてピンとくる方は、お若いのです。 

 最後に、「ファシリテータ」でも戸惑っていることを白状しましょう。最近はよく耳にする言葉ですが、自分で使用したことはありません。私の世代では、議長、座長、司会などまでしか使ったことが無く、「ファシリテータ」を使って会議進行を行った経験はありませんが、最近のシンポジウムやセミナーでは司会者と呼ばず「ファシリテータ(進行役)」と呼ぶことが多くなりました。これもラテン語から英語になったおしゃれな表現です。もりや市民大学の教室でも、これからは「司会者」と呼ばず「ファシリテータ」と言い直して、講義進行を積極的に支援する役割を持ちましょうか?新しい時代の到来です。