3月の学長ブログ
私の学術的な専門分野は「土壌物理学」です。だから、土壌に関連するニュースやら評論やら小説やらが時々注目されるのが楽しみです。
最近では、アンディ・ウィアーという著者が書いた「アルテミス」(邦訳、「火星の人」2015年)が話題となり、「オデッセイ」という名前の映画として日本でも上映されました。この本は、火星に1人取り残された主人公が、基地に残された31日分の食料で、如何にして救助隊が来るまでの長期間を生き延びるか、という宇宙開発新時代のサバイバルSFです。そのカギとなるのが土壌でした。火星の土を基地施設内に持ち込んで、地球から積み込んできたジャガイモを植え付け、栽培して増やして食料生産を行おうというシナリオです。この本では、全体のドラマチックな展開を損なうことなく、土壌が詳細に分かり易く記述されていて、小説として大いに楽しむことができました。全世界で驚異的なベストセラーだったそうです。
国内では、高村薫が2016年に「土の記」という小説を発表しました。現役時代には電気工業会社の社員だった主人公が、妻を失い古希を迎えて奈良県の棚田でコメ作りをしている話です。夫婦を取り巻くいろいろな人間関係が主題ですが、その背景でふんだんに土が出てきます。「粘土質の黒い北関東ローム層」「水の通りの悪いグライ土の灰白色のB層」「典型的な褐色森林土」「花崗岩の薄黄色い集積層」「鉄やアルミの溶脱」「シベリアの永久凍土のポドゾルの色」「出穂30日前から葉の色と幼穂の有無」「原基が形成されたあとの幼穂の成長」などの専門用語が使われ、びっくりです。
今月3月11日(東日本大震災7年目)、A新聞36面に、育てるコツ「理想の土壌」という記事が載っていました。理想の土壌って何だろう?と興味津々で読んでみました。「“いい土”とは、適度の水分と空気がまんべんなく含まれた、ふんわり柔らかい土」「pHは、中性から弱酸性が理想的」「水はけも良く、雨が降った後にはさっと水が引く」「少々日照りが続いても適度な湿度を保つことができ、植物を支え続ける」こういったものが理想の土壌だそうです。さて、そんな土はどこにあるとお考えでしょうか?
実は、守谷の土は、まさにこの条件全てに当てはまります。つまり、我々は「理想の土」の上に住んでいるのです(*_*)。その下に常総粘土と呼ばれる白い土が出てきますが、これは残念ながら理想の土ではありません。地表面に見られる黒っぽい守谷の土を見直してください。これは、「理想の土」なのです。(注:ただし、植物によっては若干の肥料調整が必要です。)